化学発光 先端科学をのぞいてみよう トップページへ


化学発光が起こるためには発光物質(蛍光物質)が必要です。また、蛍光物質の励起状態を作り出す化学反応が起こらないといけません。ルミノールの化学発光(「実験-1」の項)ではルミノール自身が反応して生成した物質が発光物質となります。

ここでは、蛍光物質と反応物質が異なる場合の化学発光の実験です。
蛍光物質として芳香族炭化水素のペリレンを使ってみましょう。ペリレンの励起状態を作り出すための化学反応としてシュウ酸ビス-(2,4-ジニトロフェニル)(DNPO)と過酸化水素との反応を利用します。DNPO と過酸化水素とが反応して生じた反応中間体が蛍光物質(ここではペリレン)と電子供与体受容体錯体(電荷移動錯体)を作り、それが分解するときに蛍光物質の励起状態ができると考えられています。




(1) ペリレンの蛍光

映像をみる 化学発光を見る前に、ペリレンの蛍光を見てみましょう。
ペリレンに目に見えない紫外線をあてるとペリレンの励起状態が作られます。その結果、ペリレンからの蛍光を観測することができます。下のビデオではうす黄色のペリレン溶液に紫外線をあてたときのペリレンの青白い蛍光を見ることができます。



(2) ペリレンの化学発光

映像をみる 試験管に入っているペリレンの溶液に過酸化水素の溶液を加えます。そこに シュウ酸ビス-(2,4-ジニトロフェニル)(DNPO)結晶をスパチュラで半杯程度加えます(暗くしてから加えているのでビデオでは見えません)。試験管を振ると、DNPO と過酸化水素が化学反応を起こし、それに伴ってペリレンの励起状態が生成するため、(1)のビデオで見たときと同じ色のペリレンの蛍光を見ることができます。





DNPO (シュウ酸エステル)と過酸化水素による化学発光の反応機構としては未だ未解明の点がありますが、考えられている反応機構としては次のようなものがあります。



反応中間体として電子供与体受容体錯体が生成し、それがさらに分解するとペリレンの励起状態が作られます。ルミノールの化学発光と違う点は、ペリレンの代わりに別の蛍光物質を使えばその蛍光物質を含む電子供与体受容体錯体が反応中間体として生成するため、化学発光の光としては用いた蛍光物質からの蛍光が観測されることです。

歴史
原理
実験1
実験2
実験3
応用
用語
質問



■芳香族炭化水素
ベンゼン環のような芳香族性をもっている化合物をいいます。

■反応中間体
化学反応が起こったときに分離して取り出すことはできないが、反応の過程で生じる化学種をいいます。

■電子供与受容体錯体
  (電荷移動錯体)
電子を出しやすい化合物(電子供与体)と電子を受け取りやすい化合物(電子受容体)の間で生じる分子間化合物(分子化合物)をいいます。

■紫外線
人間の目に見える光を可視光といいます。可視光の波長領域はおよそ 400 nm〜700 nm です。

■スパチュラ
スパチュラは少量の試料を取ったりするのに使います。



詳しい用語説明は、 用語説明ページを ごらんください。



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