シクロデキストリン 先端科学をのぞいてみよう トップページへ
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シクロデキストリン(環状オリゴ糖)はドーナツのような形をした少し珍しい形の分子です。19世紀の終わりころにビリエールによって、このシクロデキストリンの存在が初めて明らかになりました。20世紀初めころにはシャルディンガーらがシクロデキストリンの製法、分離、精製法を研究しました。彼らの製法はある種の微生物の酵素アミラーゼ)でデンプンを分解することによりシクロデキストリンを生成する方法です。


シクロデキストリンを作る微生物(酵素)の働きは人間が食べたデンプンが消化(消化酵素)によってブドウ糖(D-グルコース)に分解されることに似ていますね。
デンプン中のブドウ糖は鎖のようにつながっています。 普通の消化では、デンプンを作っているブドウ糖どうしの間の結合が次々に切り離されていき、ブドウ糖まで分解されます。ブドウ糖がつながった鎖はらせん状になっている部分があるので、ブドウ糖(D-グルコース)が数個つながったところで切れるときは両端が近くにあるために、環状につながりやすいのです。
そのため、ある種の微生物の酵素では環状につながったシクロデキストリンが作られるのです。

その後、プリングスハイムらはシクロデキストリンがドーナツ型の穴(空洞)の中に他の有機化合物などを物理的な力で取り込む包接作用を見つけました。
シクロデキストリンは6個以上のD-グルコースD-グルコピラノース)が環状につながってできています。D-グルコピラノースが6、7,8個つながってできたシクロデキストリンをそれぞれα-、β-、γ-シクロデキストリンといいます。現在ではD-グルコピラノースが10個以上つながってできたシクロデキストリンも見つかっています。


シクロデキストリンはその特異的な包接現象を示すことで有名ですが、このような包接現象を示す化合物としては他に金属イオンを取り込む(包接する)クラウンエーテルや金属イオンおよび有機化合物を包接するカリックスアレンなどが知られています。
このように他のイオンや化合物を包接して複合体(錯体)を作ると錯体全体が1つの分子のように振舞うことになります。このような錯体を超分子といい、超分子を扱う化学を超分子化学といいます。

クラウンエーテルなどの超分子化学の分野を開拓してきた業績に対して1987年にドナルド・クラム、チャールズ・ペダーセン、ジーン・レーンの3人がノーベル化学賞を受賞しています。




■酵素
酵素は分子量が1万から100万位のタンパク質で、触媒の1種として生体での化学反応を促進する働きをします。

■アミラーゼ
デンプンなどのα1―>4結合の加水分解反応に触媒として働く酵素をアミラーゼといいます。

■デンプン
デンプンはD-グルコースがたくさんつながってできたもので、糖の仲間です。

■ブドウ糖(D-グルコース)
D-グルコース(ブドウ糖ともいいます)の分子式はC6H12O6で、炭素(C)原子6個、水素(H)原子12個、酸素(O)原子6個からできています。

■D-グルコピラノース
D-グルコースの炭素原子5個と酸素原子1個が環状になったものをD-グルコピラノースといいます。

■クラウンエーテル
酸素、窒素などの電子供与性原子をもつ大環状化合物

■ カリックスアレン
カリックスアレンはフェノール誘導体がメタ位で環状につながった化合物です。

■超分子
分子が複数集まって1つの分子のように振舞う集合体を超分子といいます。

■ノーベル化学賞
スウェーデンの化学者・技術者であるアルフレッド・ノーベルはダイナマイトを発明し大金持ちになりました。ノーベル賞はノーベルが 1901年に世界の平和を祈願して設けた世界最高の賞です。