(2)物質の色
物質の色について考えるときに、固体と液体の物質に分けて考えてみましょう。
◯固体の物質の色
固体に光があたると、固体の物質に固有の波長の光が吸収されます。吸収されない波長の光は反射されます。人間の目には物質に吸収されなかった波長の光が届きますので、反射光の波長の色を物質の色と判断します。吸収されない波長の光の色を補色といいます。したがって、固体の物質の色は吸収された光の色の補色になります。
◯液体の物質の色
液体の場合は、液体を透過してきた光が人間の目に入ります。そのため、液体で吸収されずに透過してきた光の色を液体の色と判断します。
(3)物質による光の吸収
物質はそれぞれ固有の色をもっています。このことから、物質が吸収する光の波長が物質に固有であることがわかります。光の吸収は分子中の(原子に含まれている)電子のエネルギー状態が変わることにより起こります。下のヤブロンスキー 図に芳香族化合物など有機化合物の模式的な電子のエネルギー状態の図を示してあります。
光を吸収する前の分子はエネルギーの低い基底状態(ヤブロンスキー図の S0 の状態)にいます。分子が光を吸収すると、吸収した光のエネルギーだけ余分のエネルギーをもつことになります。
したがって、ヤブロンスキー図の S1 などのエネルギーの高い状態になります。このS0-S1などのエネルギーレベルの間隔(エネルギー差)が吸収される光の波長に対応するので、物質によって吸収される光の波長が異なります。
物質がもつエネルギーの高い状態を励起状態といいます。通常の有機化合物ですと、基底状態が一重項状態なので、光を吸収した直後の状態も一重項状態なので、その状態を励起一重項状態といいます。
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(3)励起状態
光を吸収して、余分のエネルギーをもった状態(励起一重項状態)から分子は余分のエネルギーをなくしてエネルギーの低い安定な状態になろうとします。その変化の仕方には主に次の4つの過程があります。
(a)余分の
エネルギーを光として出して、元の状態(基底状態)に戻る。
このとき出る光を蛍光といいます。
(b)余分のエネルギーを熱として出して、元の状態(基底状態)に戻る。
(c)余分のエネルギー使って化学反応を起こす。この反応を光化学反応といいます。
(d)余分のエネルギーを少しだけ熱として出して、別の励起状態(三重項状態)へ移る。
この三重項状態も励起一重項状態同様エネルギーの高い状態なので、余分のエネルギー をなくして
安定な状態(基底状態)へ戻りますが、その変化の仕方には以下の3つの過程 があります。
(d-1)
余分の
エネルギーを光として出して、元の状態(基底状態)に戻る。
このとき出る光を燐光といいます。
(d-2)
余分のエネルギーを熱として出して、元の状態(基底状態)に戻る。
(d-3)
余分のエネルギー使って化学反応を起こす。この反応も光化学反応になります。
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