シクロデキストリン 先端科学をのぞいてみよう トップページへ



シクロデキストリンの「シクロ」は「環状」つまり「輪になった」という意味を表わしています。 デキストリンはデンプンを加水分解してできる D-グルコース重合体(D-グルコース(ブドウ糖)が2つ以上つながった分子)の ことです。
D-グルコースはの仲間でC6H12O6で表わされ、炭素原子5個と酸素原子1個が環状になった構造をとることができます。この6原子からなる環状の型のものをD-グルコピラノースといいます。デンプンはこのD-グルコピラノースがいくつもつながったものです。
シクロデキストリンは「環状」の「デキストリン」なので、環状にD-グルコピラノースがつながった構造をしています。D-グルコピラノースが2〜10数個つながった(重合した)化合物をオリゴ糖ということもあるため、シクロデキストリンは環状オリゴ糖とも呼ばれます。
シクロデキストリンはドーナツのような形をした少し珍しい形の分子で、D-グルコースの数が6,7,8個のものをそれぞれα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリンといいます。これらのシクロデキストリンの構造式を下図に示してあります。








(nm はナノメートルと読みます。10-9 m のことです。)
上図の構造式と左の形の図からわかるように、シクロデキストリンはドーナツあるいは穴の開いたバケツのような形をしています。この穴(空洞)の端にはヒドロキシル基(水酸基)が多くあるため、シクロデキストリンは水に溶けます。
空洞の狭い側と広い側にはそれぞれ1級水酸基2級水酸基があります。
一方、空洞の中はエーテル結合の酸素原子と水素原子があるため、疎水的になっています。
したがって、疎水性をもつ有機化合物などが化学結合を作ることなく、物理的な引力(分子間力)によって空洞の中に取り込まれる(包接される)ことがあります。


市販のβ-シクロデキストリンの結晶の写真を(1)に示します。他のシクロデキストリンも同様の白色結晶です。 (2)には水から再結晶したβ-シクロデキストリンの結晶を示します。β-シクロデキストリンは水から容易に再結晶することができ、比較的大きな結晶となります。

(1)
(2)


歴史
構造1
構造2
包接現象
応用
用語
質問





■デンプン
デンプンはD-グルコースがたくさんつながってできたもので、糖の仲間です。

■ブドウ糖(D-グルコース)
D-グルコース(ブドウ糖ともいいます)の分子式はC6H12O6で、炭素(C)原子6個、水素(H)原子12個、酸素(O)原子6個からできています。

■糖
糖はもともと一般式 Cn(H2O)m で表わされる1群の化合物をさしていましたが、現在ではこの一般式に当てはまらないデオキシリボース(DNAの構成成分)や窒素やイオウを含むものも糖に分類しています。

■D-グルコピラノース
D-グルコースの炭素原子5個と酸素原子1個が環状になったものをD-グルコピラノースといいます。

■ヒドロキシル其
ヒドロキシル基(水酸基)はアルコールやフェノールの特性基で -OH で表わされます。

■酵素
酵素は分子量が1万から100万位のタンパク質で、触媒の1種として生体での化学反応を促進する働きをします。

■1級水酸基
ヒドロキシル基が結合している炭素原子に1個の炭素原子が結合しているものを1級水酸基(ヒドロキシル基)といいます。

■2級水酸基
ヒドロキシル基が結合している炭素原子に2個の炭素原子が結合しているものを2級水酸基(ヒドロキシル基)といいます。

■エーテル結合
エーテルは一般式 R-O-R' で表される中性の化合物をいいます。

■疎水的
水との相互作用が弱く、水との親和性が弱い性質をいいます。

■分子間力
分子間力は分子と分子の間に働く力のことをいいます。


詳しい用語説明は、 用語説明ページを ごらんください。