超伝導 先端科学をのぞいてみよう トップページへ



(1) 多くの金属やある種の金属酸化物などでは、 ある温度以下で電気抵抗がなくなる (0(ゼロ)になる)ことがわかりました。 このことを超伝導といい、超伝導の現象を示す物質を超伝導物質(超伝導体)といいます。 超伝導現象は非常に低い温度(極低温)でないと見ることはできません。

水銀において、このような超伝導現象がカマリング・オネスによって発見されたのは1911年のことです。


(2) -200 ℃(絶対温度で73 K)くらいで超伝導現象を示す物質が 1980 年代に見つかりましたが、 このように比較的高い温度で超伝導現象を示すものを「高温超伝導体」といいます。 高温といっても、-200 ℃くらいの非常に低い温度なのですが、 オネスが水銀で超伝導現象を見つけた 4.2 K(-269℃)よりはずっと温度が高いのでこのように いうのです。

多くの高温超伝導体は普通、数多くの元素からできています。たとえば、135 K(-138 ℃)で 超伝導現象を示すHgBa2Ca2Cu3O8は水銀(原子1個)、 バリウム(原子2個)、 カルシウム(原子2個)、 (原子3個)、 酸素(原子8個)と いった5種類の元素からできています。


(3) 金属は原子が規則正しく3次元的に並んでできています。原子は中心に正の電荷をもった原子核とその周りを回っている負の電荷をもつ電子からできています。このような金属の中を電子が動くことによって電流が流れます。原子核は静止しているのではなく、熱エネルギーがあるため、ある位置を中心にして動いて(熱運動して)います。電子は障害物となる原子核の熱運動が激しいとスムーズに進むことができないために、電流は流れにくくなります。つまり、金属の温度が上がると(原子核の熱運動が激しいと)電気抵抗は大きくなります。したがって、温度を下げると原子核の熱運動は少なくなってきて、電気抵抗は小さくなります。極低温で電気抵抗がなくなった状態が超伝導です。


(4) 両端をつないだ銅線などに瞬間的電流を流すと 電気抵抗があるために熱が発生してエネルギーが失われます。そのため、やがて電流は流れなくなります。 もし、電気抵抗がないと瞬間的に流した電流はエネルギーが熱になってなくならないため、 いつまでも流れることになります。超伝導物質で作った電線の両端をつないで、 それに電流を流すと 永久に電流が流れることになります。

電気抵抗がない超伝導物質を電線にして電流を流すと、非常に強い電磁石を作ることができます(「応用」の(1)を見てください)。そのため、超伝導物質が注目されるようになりました。


(5)

超伝導物質では磁石からの磁力線が中に入らず避けて通ります。 この現象をマイスナー効果といいます。

電気と磁気とはいわば双子の兄弟のような関係にあります。電線に電流が流れるとその周りには磁石の働きをする 磁気(磁場)が作られます。その様子を下の図に示します。

逆に、電線の周りの磁気(磁場)が変化すると電流が流れます。








マウスのカーソルを左図の上に持っていくと回路のスイッチが入り電流が流れ、磁場が生じます。
やがてスイッチが切れて電流が流れなくなり、
磁場がなくなる様子を見ることができます。





マウスのカーソルを右図の上に持っていくと、 電線 (コイル)の周りの磁場の強さが変化して コイルに起電力が生じ電流が流れる様子を 見ることができます。



超伝導物質を磁気(磁場)の中に入れると超伝導物質の表面に超伝導電流が流れるため、その超伝導電流が作る 磁気(磁場)が超伝導物質の周りの磁気(磁場)と打ち消しあって超伝導物質の中には磁力線がなくなってしまいます。
これがマイスナー効果の現れる理由です。

BCS理論では極低温で2つの電子がクーパー対といわれるペアを作り、1種の凝縮状態となると考えます。この状態では電子はそのまま運動したほうが安定なため電気抵抗がゼロとなると考えられます。しかし、高温超伝導ではこの理論では説明がつかず、現在も研究が行われています。

歴史
原理
実験1
実験2
応用
用語
質問




■金属酸化物
金属と酸素とが結合してできた化合物をいいます。

■電気抵抗
電気の流れやすさを示しているのが電気抵抗です。

■水銀
水銀の元素記号は Hg です。


■絶対温度
温度の表し方。
絶対温度の単位は「K」です。これはケルヴィン(Kelvin)が初めて絶対温度を使ったことからきています。

■バリウム
バリウムの元素記号は Ba です。

■カルシウム
カルシウムの元素記号は Ca です。 

■銅
銅の元素記号は Cu です。 

■酸素
酸素の元素記号は O (アルファベットの「おー」)です。

■瞬間的
電気と磁気はお互いに関連しています。電流があるとそのまわりに磁場(磁気)が発生します。同じように電線のまわりの磁場が変化すると電線に電流が流れます。
 そのため、電線に磁場を瞬間的にかけることによって、瞬間的に電流を流すことができます。


■電流
電気の流れを電流といいます。

■永久に電流
マサチューセッツ工科大学のコリンズは超伝導物質で作った線に電流が2年半も流れ続けたことを確かめています。

■磁力線
磁石の上に紙をおき、その紙の上に鉄粉をまいて軽くたたくと鉄粉が磁石から整列して並びます。この並んでできた線を磁力線といいます。


詳しい用語説明は、 用語説明ページを ごらんください。