指導者の危険予測・注意
野外観察は危険を伴う  学校から一歩外に出て活動するときには,指導者は常に危険を予測し,事故やけがの防止を念頭に置くべきです。行き慣れた場所,よく知る場所であってもそれは同じです。ここでは,指導者が野外観察を計画する際に知っておきたいこと,現地で児童に指導すべきことを紹介します。
1.がけの状態に気を配る
 観察場所が,ある程度のがけになっていることがほとんどです。このホームページで紹介している露頭は,危険が少ないものを選んではいますが,何しろ自然相手の学習です。刻々と状態は変化すると見た方がいいでしょう。児童は観察に夢中になると視界が狭くなってきます。指導者は,常に全体を見通して児童にせまる危険がないか注意しましょう。がけが崩れるという場合には,その前兆として小石がぱらぱらと崩れてくるということが知られています。がけに刺激を加えていないのに,継続的にそのような状態があったら,児童を避難させましょう。また,地震が観察中に起こったら,すぐさま離れることを徹底します。また,雨が降った(集中豪雨・大雨)あとの数日間も注意すべき日となります。地盤がゆるみ,ちょっとの刺激で崩れることがあります。
2.危険な植物・虫・動物
 触るとかぶれてしまう植物や,刺されると痛い虫,危険な動物(熊など)の存在をあらかじめ把握しておきましょう。地権者の許可を得てからになりますが,観察に不要な草などはあらかじめ刈っておくといいでしょう。また,児童には目的意識を明確に持たせて不用意な行動をとらないように指導することも大切です。
3.虫眼鏡(ルーペ)の使用法
 地層を構成しているものは何かをじっくりと観察するには,虫眼鏡(ルーペ)の使用が不可欠です。目にルーペをほぼ密着させて観察したい対象物を動かしながらピントを合わせて観察します。虫眼鏡の使用法で注意すべきことは,太陽を見ないということに尽きます。太陽の光を集めて,黒い紙をこがす実験を児童は経験していますが,その集められた光が目の網膜を焼くことになるわけですから失明の危険性が非常に高いのです。児童にはくれぐれもいたずらさせないように指導しましょう。
4.ハンマーの使用法
 教科書にはハンマーの使用について触れているものはほとんどありませんが,今回改訂された指導要領解説にはハンマーに関する記述があり,使用する際にはゴーグル(保護眼鏡)の使用が推奨されています。岩石サンプルを採取する必要がある場合は,ゴーグルも準備しましょう。ハンマーは,図工で使用する金づちではだめで専用のものを使います。なぜかというと岩石をたたいたときに破片が飛び散りにくい形状を専用の物はしており,加えてハンマー全体がひとつの鉄でできており,金づちにありがちな作業中に鉄の部分が抜ける・飛ぶということがないからです。専用のハンマーと保護眼鏡がなければ児童に作業させることはできないと考えたほうが安全です。
 ハンマーと保護眼鏡があり,児童に岩石サンプルを採取させる場合には,周囲に人がいないか十分注意し,指導者の目の届く場所において行わせましょう。(岩石の飛び散る半径は,採取対象の岩石の硬さによりますが数メートルと考えましょう)
5.交通事故
 観察場所が道路に隣接していることがほとんどです。観察に夢中になって,またはバスへの移動の最中,事故にあうことがないように指導者は目を配りましょう。